東野浬様
逃げられないと解っているからこそ、彼は逃げるのだ。
『それ』から。
「はぁ、はぁっ…!!」
闇の佇む森の中をひたすら彼は走っていた。
名はシェゾ・ウィグィィ。漆黒の闇を従え、夜を司る『闇の魔導師』である。
「っ…はぁっ…はぁ…んっ!おわっ!!」
後ろを気にしながら走っていた所為か、シェゾは足下の木の根っこに気付かず引っ掛かり、そのまま転倒する。
「いっ…つぅ〜」
おもいっっっきし頭を打ったらしく、頭部をさすりながらもその場から素早く立ち、また走り出す。
まるで何かを恐れているかのように、ただひたすら走る。
そしてまた暫く走りつづけていると、前方視界に人影が現れた。
それを見たシェゾは、立ち止まり息を飲む。
「なっ!?」
息を飲み、驚きの言葉を上げ驚愕の瞳で目の前を見るシェゾ。
そんな彼をあざ笑うかのように、目の前の人物は言葉を紡ぐ。
「ご苦労だったな。で、もう気が済んだか?」
「!」
その人物の言葉を聞き、シェゾはようやく自分が弄ばれてた事に気が付く。
屈辱的な衝動が彼の中に芽生え、言葉に変えられる。
「このっ…スチャラスカ変態魔王がっ!!」
威勢良くそう言い、シェゾは印を切る様に手を結び呪文を詠唱し始める。
が、目の前の人物はそれを待つほどお人良しではなかった。
「まだまだだな…大人しくしていれば良いものを」
そう言うと、手から魔力球を呪文無しで生み出し、シェゾへと無造作に放り投げた。
もちろんシェゾはと言えば…
「っ!シールっ!うわぁぁぁっっっ!!」
と、早急に呪文を変更したが間に合わず直撃食らってあっさり吹っ飛ばされる。
「く…あっ…」
魔力球の腹に受けた所為で呼吸を一時中断されたのか、咳き込みながらもシェゾは立ち上がり、キッと目の前の人物の名を低い声音で呟いた。
「…おのれ…サタン!!」
「言っておくが、私の所為ではないぞ。お前さんが注意力散漫のヨワヨワなだけだ」
「ふざけんなっ!!」
キィィィッッッっと、怒るシェゾにもサタンはドコのどちら様?なカンジでいともアッサリ簡単に流して、シェゾへと一歩足を近づけた。
「!?」
で、イヤな予感がしてシェゾは一歩足を引く。
本人曰く、このカンは頼りになると言う。
が、カンはともかく『運命』はシェゾには微笑んでくれなかった。
一歩引いた足に硬いものがぶつかり、慌てて後ろを振り向くと大木が彼の真後ろにどっちゃりと居座っていて、これ以上の退去を阻んでいた。
「んなっ!」
焦るシェゾだったが、そんな合間にサタンはサクサクとシェゾとの合間を詰めてアッサリサックリ、その距離は目と鼻の先になっていた。
「さて、もう一度言うぞ。大人しく観念するんだな」
「誰が!!んなことすっかっ!!あんな…事っっっっ!」
間近に迫ったそんな声にシェゾは頑なに首を横に振り、叫ぶ様に声音を出す。
そんなシェゾに、サタンはちょっと困った顔をすると言葉を続けた。
「なら何なら良いんだ?」
「全部やだっ!!なんで俺なんだぁっっっ!?…魔導学校教師対抗演劇『シンデレラ』の、シンデレラ役がぁぁぁっっっ!!!」
サタンの肩を引っつかんで、シェゾは怨念宜しくの声でそう唸った。
「シンデレラは嫌か?白雪姫が良いか?眠れる森の美女がいいか?」
そんなシェゾの悲痛な叫びを無視して、サタンは唸りながらなんコトを言いのける。
「って…ヲイ。それ最後に必ずキスシーンがある奴じゃねーか(怒)!!」
「当たり前だ!!私が王子様なんだからな!!」
「………」
「ん?観念したか?そーかそーか♪では、ここでついでに稽古もしてしま…」
「だーれが、観念なんかすっかぁぁぁぁっっっっっっ――――!!!
この万年エロがっぱ中年親父がぁぁぁっっっっっっっ!!
アレイアード・スペシャルっっっっ!!大打撃っっっっっ!!!!!!!!!!」
「のっ、のわぁぁぁっっっっ!!!!!」
で、死闘(?)の末…。
サタン様は、綺麗さっぱり吹っ飛ばされたそーな。
まっ、お後が宜しいよーで。
「宜しくないわっ!!!むむむむっ!!折角の『行事ついでにキスをしちゃえ大作戦』がぁ〜!!
こーなったらぁ〜ふふふふむぐっ!?!」
「をのれは…(怒)。コンクリ詰めにして、マリアナ海溝に沈めたるわっ!!」
…えー、こんどこそ終りっっっ!!(爆)
おわじ。
+アリガトウナ気持チ+
可愛い―――っ!!
シェシェシェシェゾがぁぁぁぁっ!シェゾが可愛いッス!!
「おわっ!!」がイイです「おわっ!!」が!(謎)
サタン様…職権乱用……(大笑)
ありがとうございました☆